特に、人気で知名度が高いのが「九条ねぎ」なのだが、
実は、そのほとんどが、真の生産地以外の「九条ねぎ」だと言う。
「九条ねぎ」の種を用いて栽培・収穫したものは、
生産地によらず「九条ねぎ」を名乗ることが出来る事が理由なのだが、
京都府下、例えば、亀岡や丹後などで盛んに生産されているものは、
「京都」と言う意味では幾分マシなのだが、
京都府以外で生産されても「九条ねぎ」というのは少し合点がいかない。
そういう訳で、「九条ねぎ」真の生産地である
南区上鳥羽の葱畑を取材してきた。
取材と言うのも、幾分大層かもしれない。
なぜなら、私の職場が上鳥羽なのである。
毎日、葱畑を眺め通勤をしているのだが、
見慣れた光景も、改めて見つめなおしてみると、
新たな発見があり面白いものだ。
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上鳥羽地区
京都市南区。
国道1号線と名神高速の南インターが交差する
交通の要所である上鳥羽地区は、
西から、桂川、西高瀬川、そして鴨川の三川が合流する
中洲のような場所である。
各河川から運ばれる栄養価の高い土壌が、
肥沃な大地を作る反面、土地が低く、
古くから度重なる洪水に悩まされてきた。
そのため、家によっては、洪水時に使用される小舟が
用意されていたという。
普段は水量の少ない西高瀬川も・・・ |
ひとたび大雨が降れば、 「荒ぶる川」として、地区住民を悩ませてきた。 |
いや、正確に言えば、発祥地は上鳥羽よりもう少し北の九条(東寺)周辺であったが、
宅地化・工業地化の波に押され、生産地が北から徐々に消滅。
現存するの上鳥羽地区も、京都駅まで数キロと言う利便性から、
現在も尚、田畑の減少は続いている。
そんな、上鳥羽の地であるが、宅地化の波に逆行するように、
住宅や工場の合間を縫うように残る僅かな畑にて、
綿々と「九条ねぎ」は作られている。
葱畑を囲む建物群。 当たり前の話だが、近年まで広大な田畑が広がっていた。 |
京都府下、府外にも及ぶが、その生産方法も伝統的な栽培法とは大きく異る。
伝統的な栽培方法では、種植から収穫まで一年以上掛かるのに対し、
その他の生産地では、収穫まで3ヶ月という。
いわゆる促成栽培なのであるが、
期間を短く栽培・出荷するのは非常に効率が良いが、
反面、本来の「九条ねぎ」の味には遠く及ばない。
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伝統的生産法
さて、「九条ねぎ」の伝統的生産法であるが、
秋に種まきをされた芽を、ある程度成長した春に間引き、
きちんとした形で植え替えを行う。(*上写真参照)
そして、幾分成長した夏に一度収穫するのである。
ただし、この収穫は出荷のためではない。
「九条ねぎ」が「九条ねぎ」たるものにするための、
大切な工程の一つなのだ。
こうして夏に一度収穫した「九条ねぎ」は、
そのまま、畑にて放置される。
この様な逆境にあえてさらすことによって、
ネギに力が付き「九条ねぎ」独特の旨味が生まれる。
一旦、土壌から抜かれた「九条ねぎ」は、
秋に再度植え付けられる。
底冷えがする京都の冬は、気温以上に体感温度が低くつらい。
以前、青森出身の友人が「青森より寒い」と言っていたが、
どうやら、雪国の方でも京都の冬は身に応えるらしい。
しかし、この京都の底冷えがあってこそ、
「九条ねぎ」が「九条ねぎ」たるもう一つの所以であろう。
盆地である京都は、特に朝晩の気温は低く、
非常に霜が下りやすいのだが、一度抜き取られ
力のついた「九条ねぎ」は寒さに負けじと防御する。
それが、あの独特の”ぬめり”を出すのである。
見かけは同じでも、本物の九条ねぎは切るとわかる。
新鮮な「九条ねぎ」に包丁を入れると、
ドロッとしたゼリー状のぬめりが出てくる。
糖分を存分に含む正体はペクチンやセルロース。
この“ぬめり”が、「九条ねぎ」に更なる旨味をもたらすのである。
出荷を待っている「九条ねぎ」 |
食材としての九条ねぎ
「ネギ」というイメージから、脇役のイメージが強いが、
次のような食べ方は、立派にメインの食材となる。
・ぬた 細めの「九条ねぎ」を、多めの湯でゆがく。
根付近の白い部分は巻きが多く火が通りにくいので、
先に根部分から湯に入れ、30~45秒後に緑部分を入れると良い。
緑の部分は、火が通りやすので、直ちに引き上げ冷水に晒す。
根付近を輪ゴムで縛っておくと扱いがしやすい。
鳥貝や、魚の切り身などと合わせ、酢味噌を掛ける。
・焼きネギ 太めの物が良い。根付近の白い部分を5cm程に切り使用する。
焼き網で焦げ目がつく位に焼く。焦げがキツくても、一皮むけば良い。
田楽みそや醤油をかけて食す。
多く使用されるのは、薬味としてだろう。
細く輪切りにした「九条ねぎ」は、他のネギに比べぬめりが強いので、
味を損なわない程度に水洗いして使うと良い。
鍋など、煮炊きする場合は筒切りに。火を通せば独特の甘みが増す。
鴨肉と炊いた治部煮も美味だが、火が入りやすいので注意する。
太めのものなら、天ぷらも美味しい。
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このように、生でも、火を入れても美味しく
食べることが出来る「九条ねぎ」。
しかし、正確なその産地や栽培方法は案外知られていない。
肥沃な大地と、伝統を守ってきた生産者の方々の
手間暇を惜しまぬ努力が「本物の九条ねぎ」を作る。
しかし、一方で農地は減少の一途をたどり、
専業農家は殆どおられないという(地元居住者談)
この様な取材をしていると、街中で農業を営むことの
難しさがよく分かる一方で、
「かつてこの地にいた「幻の魚」の痕跡を求めて ~最後の芹田と若一神社の湧水~」
のように、頑なに農地を守っておられる方もおられる。
伝統野菜の復活が謳われて久しく、
錦市場の京野菜専門店には、色とりどりの京野菜が並ぶ。
農家の方々の苦労と工夫に敬意を払いながら、
今回のレポートは終わりとさせていただく。
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6 件のコメント:
京野菜のほとんどが滋賀県産と言われますものね(^^;;
農家の方はそれは苦労されていますよね。美味しく頂きたいものです。
虫さん
こんばんは。
そうですよね~。
私達の住む西京区は、
まだ田畑が多い方ですよね。
特に、よく行く大原野なんて、
素晴らしい棚田の風景が広がっており、
「ホントに京都市?」って感じですね。
さて、虫さんはカブクワにも非常に
造詣が深いご様子ですね。
(専門家なのに当たり前ですよね)
共生菌についての論文記事を読ませて頂いて、
以前からの疑問がありまして・・・
また、後日
質問に虫さんのブログにお邪魔しますm(_ _)m
Sigeさん
おもしろいことを調べてますね。
京野菜の歴史はすごいと思いますが、他県の産地にはブラックボックスで情報が解らず、いちげんさんおことわりて感じです。
当方、昔一度仕事で京野菜栽培を視察したいと言われたことがありますが、一般流通とは違うので、依頼者にそれは無理ですとお断りしたことがありました。
テレビで京野菜のバイヤーの番組を見たことありますが、ネギがら出てきた餡を見て驚いたことを思い出しました。 引っこ抜いて干していたなんて全く驚きです。。
いや~びっくりしました。。
おおっ?
魚菜さん、野菜に関連するお仕事をされているのですか?
私は、何度かブログでも語っているように、調理の仕事をしておりますので、
九条ネギや鷹峯大根などと共に、
毎日「遊んで」います(^。^)
「遊んで」いると言っても、所詮仕事なの
で、見るのもイヤになる日もありますが(T_T)
本文に出ていた「錦市場の京野菜専門店」も
以前は、普通の野菜納入業者で取引もありましたが、
10年くらい前に突然「もう配達業務は辞めます。扱う商品も京野菜専門に変わります」と言われ、
新たな八百屋探しに苦労した思い出があります。
その某京野菜専門店は、
丁度、京野菜ブームの波に乗ったのか、
野菜料理店なども併設し、
今は、市場内でも一段とお高くとまってらっしゃいます((+_+))
Sigeさん
お仕事関係で京野菜を使うんですね。
当方はこの3月末までは農業経営管理全般の仕事でしたが、この4月からは茶技術関係の仕事になります。
茶関係も京都は技術・文化とも奥深くて関西の茶市場は京都が中心です。
そうそう、錦市場いいですね。。
どんな魚が置いてあるか、どんな食材が置いてあるか、遊びのタネできました。。
>魚菜さん。
「京の台所」と呼ばれた頃の錦市場は、
10年ほど前から急速にその姿を変え、
現在は、お土産店がほとんどで、
新京極通りさながらの様相を呈しております<(`^´)>
お客さんも、観光客の方がほとんどで、
外国人観光客も多いです。
刃物の有次なんかは、日本人より、外国人のほうが多いくらいです。
昔ながらの魚屋や、八百屋も数件あるのですが、
飲食店への配送を主な業務にしているようで、
小売りは殆どされていないようです。
懇意にしている錦市場青年部の会長は、
「活性化!」と言って張り切っていますが・・・。
観光目的であれば、十分楽しめますが、
百戦錬磨の魚菜さんには、
少々物足りないかもしれませんね。
作務衣を着て買い出しに行った頃が懐かしいですが、
これも時代の流れです。
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