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2013年11月26日火曜日

Break Time / クツワムシ問答

木枯らし一号もとっくに吹き、
霜が降りて、晩秋というより早くも冬の
匂いがしてきた11月の終わり。
つい1月前には、あれだけ賑やかだった
河原の虫たちも、今はもう既に無く、
ただ、北風と川のせせらぎが聞こえるだけになった。

大型で、賑やかなクツワムシは、
私の住んでいる京都では、未だお目にかかったことがない。
あの大きな鳴き声なので、居ればすぐにわかるはずなので、
やはり、いないのだろう。
いや、過去には居ただろうから、
「今は、いないのだろう」が正しいか・・・。

捕まえると、容赦なく噛んでくる、
クビキリやカヤキリなど他のキリギリスの仲間のように凶暴ではなく、
ヤブキリやキリギリスのように、大型の昆虫、例えば、
セミ、カマキリ、ショウリョウバッタ等を捕えて食べるわけでもない。
俊敏で、中々捕まえることができないバッタ達に比べ、動作は緩慢。
「逃げる」という事を知らぬのか、ハタマタ優雅とでも言おうか・・・

キリギリスは、人の気配で鳴くのをやめ、ヒメギスなんぞは、姿も見せぬ。
それなのに、クツワムシは威風堂々。
葛の葉の上にドシンと構え、人が近づいても鳴き止もうとはしない。
まさに「虫キング」だろう。

そうそう。忘れてはいけないキングっぷりがある。
鳴き声だ。
スズムシのように風流でなく、エンマコオロギのように秋を感じる事もない。
ただただ、騒音でしかない。
・・・と、やはり思われているようだ。
つまりは、風流でも優雅でもなく、「害」。
そう、害虫として扱われている。
イナゴのように、稲を食い荒らすわけでもないのだが、
やはり、その鳴き声が、どうやらネックになっているらしい。

秋の夜長、読書だなんだとくつろいでいる時に、
何の前触れもなく、いきなり「ガシャガシャやられたのでは
たまったもんじゃない」のが本音。
しかも、彼らはたいてい複数でガシャガシャ。
メスを呼ぶため競い合うから、その鳴き声は相乗効果。
倍ではなく、二乗三乗で増幅されるから不思議なものだ。

こんなクツワムシだから、近年、
その数を、大きく減らしてる。
宅地化や道路の建設などで生息地が減少していることと、
それと先に述べた「害虫」として。

我が京都でも、そのような理由があったのやも知れぬ。
キリギリスもヤブキリもウマオイもいるのに
何故か、クツワムシだけがいないのは、そういうわけだろうか。

さて、今回はタイトルにつけた「問答」。
「問答」は、禅の言葉であるが、
押し問答などと、我らの生活にも密着した言葉である。

このところ、私が、クツワムシに対して問答を行っているのである。

問答などと、大袈裟な事を言ってはいるが、
私が、禅の悟りを開いた訳でもなく、
ただ、飼育しているクツワムシの事を考えたら、
果たして、どちらがいいのか?と、言うところに行き着いた。

現在、私は、2匹のクツワムシを飼育しているのだが、
このクツワムシたちは、9月のはじめ、
釣行ついでに、福井県で捕獲したものだ。
9月のはじめには成虫で、既に鳴いていたことから、
成虫期間はゆうに3ヶ月以上は経っていると思われる。

長寿だ。

野生下のクツワムシたちは、とっくに息絶え、
残された卵達が、次世代に託された「生きた証」である。
しかし、私のクツワムシは、生きている。
後ろ足は、既に弱り果て両方共取れてしまい、
ケースにひっつく自慢の吸盤も威力がなくなった。
羽はすり減り、半分ほどの長さになった。

10月の中旬を最後に、全く鳴かなくなり、
下の方で、じっとしていることが多くなったが、
それでも彼らは生きている。

私も、人生の折り返しを越える年齢になって時々思う。
「もし、私が、相当な長寿ではあるが、健康ではなく満身創痍なら。」

手塚治虫先生の名作“ブラックジャック”に、こんな話が出てくる。
ある部族の超高齢女性は、生きてはいるが、
全身にメスが入り、「ただ、生かされている」存在なのだ。
医師たちは、プライドにかけてその老人を生かそうとするが、
当の本人は、死にたくてしょうがない。

クツワムシに関しても、まさに、その境地だ。
自然下では既に息絶えているものを、
飼育において長生きさせることが、「果たしてクツワムシにとって
いいのかどうか?」
これが、禅で言う問答とは程遠いかもしれないが、
自分にとっては、十分すぎるほど問答であり、
答がの出ていないところだ。
これから、答えが出るのかは、正直わからないが、
それまで、毎年、「クツワムシ問答」をすることになりそうだ。


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